2010年6月7日月曜日

宮城県柴田町図書館の開館


5月29日(土)宮城県柴田町の図書館開館式に行ってきました。
この日は、柴田町図書館の開館式が行われた。西野は、開館に先立って行われた「柴田町に図書館がほしい!会」による会の新春交流会を兼ねた学習会の講師としてお招きをいただき、つたない話をしたご縁もあり、このたび開館式を見学させていただいた。
柴田町図書館は、平成9(1997)年の中央公民館基本計画の中に図書館が含まれることが盛り込まれたことから、設立が現実のものとなった始めである。
当時の構想は、総工費58億6千万円、図書館部分は12億円という町の財政的基盤を考えると、非常に大きな建物を想定するものであった。
平成11年度になり町議会は中央公民館の建設延期基本設計料の事実上の凍結を決定、「柴田町に図書館がほしい!会」(平成8年2月活動開始)は「柴田町図書館研究会設立」を請願、趣旨採択後14年に研究会スタート、16年に調査報告書「公立図書館ののぞましい姿」提出されるにいたった。
この間の一連の動きは実質的には中央公民館構想の見直しと、図書館単独施設建設への転換である。
この間、住民側の動きと並行し、生涯学習課による調査研究活動が継続される。
平成19年教育委員会内に設置された住民参加による「まちの図書館設置検討会」が20回にわたる
検討会かさね、翌年既存の生涯学習施設を活用した図書館設置を報告し、今回の開館につながった。
図書館単独施設設置から、既存施設活用への再転換である。

活用される既存の施設は、しばたの郷土館・ふるさと文化伝承館、図書館は伝承館の1階ロビーを埋めるような形で、専有面積
327平米が充てられた。ただし、伝承館内にあったITプラザー67平米はそのまま図書館内設備として活用されることとなった。

以上の経過を踏まえて、この図書館の特徴について少し書き残しておきたい。

ひとつは、この図書館があくまで暫定的な施設であるということ。将来は本格的な図書館へと衣替えすることを目指すということを建前としていることだ。
開館式において滝口茂町長はこのことを明言し、強調した。少なくとも、柴田町図書館研究会案への回帰を述べたものと私は理解した。
二つ目は、郷土館・文化伝承館という極めて特徴のある施設内にある施設であるということだ。この施設の中には、産業展示館、郷土資料展示館、齊藤博記念文庫、
茶室如心庵、芝生中庭などの相当なる費用をかけたと思われる施設群がある。町行政担当の方のお話では国の助成金による施設ゆえに大幅な改築は難しいということではあった。
三つ目の特色は、行政と住民との協力関係が非常に強いということだ。柴田町は、財政的には収入支出のバランスは悪くはないし自主財源比率も60%近い数値を示している、
現在の財政運営状況は健全化に向かっている。一方、実質公債費比率が21%と県下で2番目に数値が悪い。また、財政の弾力性を測る指標、財政調整基金基金の積み立ても
単年度1億円を切っており、相対的に下位で余裕のない財政運営をしいられている。これは、現在の財政運営は健全であるが、過去において大きな借金をしており、
これが現在の財政運営の硬直化を招いているという事実を意味している。
(http://www.pref.miyagi.jp/sichouson/宮城県総務部市町村課「平成20年度決算目で見る財政指標」)
このような、台所事情が苦しいなかにおいても、仮住まいながら図書館開館にこぎつけた背景には、現町長の並々ならない図書館に対する思いを感じ取ることができる。
また、それを支える「欲しい!会」をはじめとする町民の図書館設立を望む声の大きさがある。
開館式および記念イベントも2日にわたり、初日に行われたオープニングセレモニー以外は、ほぼ住民の手作りのイベントが目白押しであったことがそれを裏付けている。

柴田町図書館の今後
柴田町図書館は曲がりなりにも開館した。しかし、これは仮の図書館である。床面積300平米、3万冊の収容能力ということでは、到底町民の読書要求に答えきることはできない。
今後この図書館が、2000~2500平米という本格的な図書館へと脱皮できる支えとなる町民世論を作るためには、何よりも図書館利用者の数が多くなることが必要条件となろう。
現在、職員体制としては館長(兼務)以下副館長、職員2、嘱託職員1、臨時職員2という体制ではあるが、図書館経験を持つ職員は嘱託職員と臨時職員の計2名だけであると聞くが、少なくとも
正規職員3名のうち2名は司書資格を持ち、明確なサービス理念を共有できる体制を組んでゆく必要があろう。
町長は、司書を公募採用することの困難をうたうが、職員を司書講習に派遣し資格をとらせる手段も有効である。

次にサービスネットワークの形成であるが、町内には生涯学習センター3、農村環境改善センター1と比較的大きな生涯学習センター、そして3つの公民館があり、
それぞれに図書室を持っている。また、学生数2000の大学、高校、中学校3、小学校6、養護学校1、幼稚園4、保育所3、児童館5がある、その他診療所、福祉センターなど
地域施設は充実している。これらの施設への効果的な配本活動も図書館活動の重要な柱である。自動車図書館などの活用による効果的な読書推進活動が期待できる。

これらの地域活動を、行政側だけで展開することは出来ないし、かつ地域のことはその地域の施設職員や住民が読書要求の在り処をよく知っているはずである。
教育委員会組織を乗り越えた全庁的な読書推進活動を担う組織を作り、総合的な事業展開が期待されるが、開館セレモニーに集まった町民の年齢層や「ほしい!会」の組織率(100名弱)
見た時その可能性は少なくはないと言えよう。なお、「ほしい!会」は今回の図書館開館を機に「柴田町図書館とともに歩む会」に衣替えした。

次に、図書館が間借りしている郷土館活動との提携事業が考えられる。柴田町は、歴史・文化・気質の点で子どもたちに生きた歴史・民俗教育を行える恵まれた条件を持っている。
図書館の事業展開も、このような活動を道を取り込んだものとすることにより、より重層的な学習と読書を組み合わせた事業展開が期待できると思われる。

以上のように、この図書館の持つ可能性は将来的に非常に大きいと言える。
できることならば、10年という長期計画と、5年という中期計画を教育委員会でしっかりともって、図書館を成長させ総合的展開を図って欲しいと強く願っている次第である。

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