2012年1月22日日曜日

アーカイブとまちごと図書館-まちとしょテラソ

小布施町立図書館
2011年1月27日雪時々曇り
http://machitoshoterrasow.com/index.html

長野電鉄鉄道の特急に乗って20分、雪交じりの天気の中を小布施の駅頭に降り立った。
駅前の賑わいは本来の町の中心とは別のところにあるということには慣れてきたが、それにしてもややさみしい感じがした。
街中に向かって少し歩くと、「こけし」という蕎麦屋さんがある。天気も天気なので、暖を取りたいこともあって昼食をとるため暖簾をくぐった。田毎そばという名前に興味をそそられ、食すこととした。
ここは、名所「田毎の月」で名高い千枚田の近くだけど、はてさてどんな飾りそばが出てくるのか興味が湧いたからだ。出てきたそばは、冷そばの上に大エビ天ぷらをまるごと1尾載せてある、その周りに山芋のすり身やきのこ、大根おろしなどいろいろな具が乗っており、信州の地粉を使っていると思われよくしまった香り高いそばであった。
1300円は高いように思えたが、味には満足した。

そこから駅頭にもどり、適当に通りをゆくと案内のとおり町役場、その裏に図書館があった。
図書館のホームページから予想はしていたが、鄙には珍しい斬新なデザインの図書館であった。
町役場の裏は小学校の校庭になっている、その横に図書館があるのだが、平屋建ての上に浅いすり鉢をかぶせたような屋根の曲線の美しさに惹かれるものがあった。
窓はどこも大きく区切ってあり、外交がたっぷり開いている。照明は、雪曇りの日でも殆どいらない感がするほど明るい。
入り口を入っての開放感といったらなかった。柱が細く上が枝状に分かれており、天井を支えている。天井は、ゆるい曲線を描いたスリット状に切りこまれた板で囲まれた手のいだが、白木の木目がそのまま下から見えて、心地良さを倍加しているような気がした。

この図書館には、所謂仕切りというものがない。なんとなくゾーンが置かれていて、シームレスに移動が可能である。事務所も開け放たれており、小さな書庫もオープンなところに置いてある。
館長の執務席は、入り口カウンター奥のちょっと大きめの椅子と大画面のディスプレイがその印である。ちなみにカウンターは、入り口横と奥の調べ物コーナーに2つ。閲覧席は、一面のガラスで採光された窓に沿ってゆったりと並べられている。児童書架と一般書架に沿ってそれぞれ置かれているのだが、誰がどこに座ろうと利用者のかってである。
ただ、一般向け書架の方にはどの席にも有線LANがしいてあり、PCを持ち込んだ人は自然とそちらの席を使うようになっているだけである。
入り口をはいると,左も窓に沿って絵本コーナーがあり,絨毯敷きになっていて、沓脱がある。
ここで読む姿勢は寝転がろうと、どうしようとこれも利用者の勝手なのだ。


入り口右手の窓にそって児童コーナーになっている。図書館の中央部分に一般図書のコーナーがある。その奥が調べ物コーナーである。

開館時間は、朝10時から夜8時まで、職員は9時に出勤し、1時間館内清掃と書架整理を行う。
ちなみに職員は、館長以下3名が常勤職員(内、館長と学芸員資格を持つ職員は、最長5年の期限付き任用職員)その他非常勤の期限雇用職員、臨時職員で延13名で運営している。8名は、カウンターなどのローテーションに入り、残り5名で企画、運営の仕事に携わる。
館長の花井氏は、TVなどを中心に映像制作に携わったディレクター経験が長いが、小布施町の取材を通してまちが進めようとしている、文化と人を大切にする気風が気に入り、10年前から移住し、図書館新築の話があったときに公募館長として25名の立候補者の中から選任された。

この図書館のコンセプトはなんだろうか。
花井氏の言葉は実にシンプルである。アーカイブを通じての町の文化行政と人のつながりを作ること。
アーカイブは、映像ディレクターであった花井氏の真骨頂であるが、今の生活と文化を100年先の子供たちに残すことをコンセプトに運営を考えているという。
ひとつは、小布施百人選、ひとつは小布施にちなんだ本のデジタル化と連想検索システムとの融合。これらを基底にしたさきに、ブックスストリート構想という街全体を本のあるまちにする計画が生まれた。

人と人のつながりは、ピカピカ現役のアーティストを招いての講演とワークショップ、それから着想した誰でもアーティストを試み、そこから様々アート倶楽部が生まれる。
そのような、取り組みの中からお父さん読み聞かせや夏休みラジオ体操(夏以外は腰痛体操)などの取り組みも市民の企画委員会から提案され実践されてきた。

花井氏の図書館の宇宙は図書館でまちづくりという大きな夢に展開している。